東日本大震災10年の軌跡
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記憶と経験を次代に継ぐ第9章復興を牽引する商工会議所の組織・体制づくり東京電力福島第一原子力発電所の事故は、長く復興の足かせとなり、10年が経ってもなお、避難生活を余儀なくされた福島県内の住民は震災前の暮らしを取り戻すことができていない。加えて、近県においても、特に海外に向けた農水産品・食料品の販路開拓に立ちふさがる大きな壁となっている。この、福島の原発問題が解決されなければ、東北の真の復興は見えてこないことから、商工会議所では、福島を応援するさまざまな事業を展開してきた。とりわけ正確な情報の収集と発信には重きを置いた。福島県商工会議所連合会、および福島県内各地、特に沿岸部の商工会議所とは緊密な連携を図りながらつぶさに状況を把握し、国内外の会議や、政府、日商等への要望などで継続的に支援を訴えてきた。さらに、福島の支援や情報発信をするのにも、まずは自分たちが現地の事情を把握しなければならないので、東北六県商工会議所連合会では、2012年から2014年にかけて、東北6県の商工会議所役員・議員、職員らが福島県内を訪れる視察研修会の実施を促し、その費用を助成することで、延べ1,300人の福島訪問を後押しした。また、2015年からは宮城県商工会議所連合会として、福島の食を詰め合わせたギフトセットを制作し、宮城県内の商工会議所議員、職員に販売してきた。東日本大震災の発災以後、国内外から多くの支援が届き、それが大きな復興への原動力となったが、加えて、東北域内においても、こうした形で相互に助け合い、一丸となって復興に邁進してきたのである。「福島の再生なくして日本経済の再生なし」を合言葉に福島の復興を応援3宮城県商工会議所連合会で立ち入り制限がかかり人気のない小高駅(福島県相馬市)付近を視察する様子(2014年10月24日)。85

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