東日本大震災10年の軌跡
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海外との交流促進で東北経済回復の足がかりに震災により東北の観光産業は大打撃を受けた。復興を果たしていくためには、風評を払拭しながら交流人口の拡大を図ることが大切な要素となる。全国的な訪日外国人客の伸びに比して東北のシェアが低調であった中、時代の潮流に乗ってインバウンドを呼び込むことは、関係者にとっての至上命題となっていた。商工会議所として最初のアプローチ先に選んだのは、隣国の韓国であった。国別訪日客数で常に上位に位置し、東北各県においても定期便やチャーター便で結ばれている馴染みが深い国である。仙台にとっても、1990年に仙台空港として初めての国際定期便が就航した間柄であり、鎌田会頭は宮城県日韓親善協会の会長も務めている。こうしたことから、東北六県商工会議所連合会では、2013年に、震災後初めてとなる海外ミッションを、韓国を訪問地として実施した。ミッションは2016年まで毎年実施し、韓国の経済や東北地方へのアウトバウンド等に影響力の大きい大韓商工会議所をはじめ、観光関係団体、航空会社等を訪ねた。また、東北とゆかりのある韓国の経済界、観光、貿易、物流関係者などを招いて「東北観光の夕べ」と称した夕食懇談会を催すなどしながら、相互交流の拡大に向けたプロモーションを行った。2016年には在大韓民国日本国大使館を訪れ、「韓国政府における水産物輸入全面禁止措置の早期規制撤廃への支援」もあわせて要請した(要望文は112ページに掲載)。さらに、仙台商工会議所としては、2013年6月、仙台で第7回日韓商工会議所首脳会議が開催されたことをきっかけに、市同士が姉妹提携を結んでいる韓国の光州商工会議所と友好協定を締結した。この協定締結を足掛かりに、同じ年の11月には、宮城県商工会議所連合会として「韓国・光州広域市訪問ミッション」を実施し、経済、産業、文化、観光面での相互理解を深めるとともに、在大韓民国日本国大使館等を訪れ、韓国政府による東北を含めた8県に対する水産物の輸入全面禁止措置の撤回に向けた支援を要望した(要望文は111ページに掲載)。加えて翌年の2014年2月には、韓国・光州放送と業務提携を結んでいる宮城テレビ放送の協力のもと、宮城県商工会議所連合会として震災後の宮城の様子をおさめた番組を制作し、同社のネットワークを活用しながら韓国内で放映することで、震災の風評払拭と宮城・東北への訪問客の需要喚起を図った。台湾をターゲットとした誘客促進韓国に続いて、インバウンド拡大戦略の先に選んだのは、台湾であった。日本政府観光局(JNTO)の統計で2019年の訪日客数約490万人、人口の5人に1人が日本を訪れている計算になる親日的な地域である。韓国同様、東北各県に定期便やチャーター便が就航しているほか、東日本大震災の発災時にも多くの支援をいただいていたことなどを背景に、2016年か記憶と経験を次代に継ぐ第8章風評払拭と風化防止海外プロモーションの強化12013年11月に宮城県連で光州広域市を表敬訪問。日本大使館も訪れ韓国政府による水産物輸入禁止措置の早期撤回に向けた支援も求めた。75

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