東日本大震災10年の軌跡
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第1部コロナ禍で進められた新たな販路開拓の手法2020年、順調に進められていた事業に新たな難題が降りかかる。世界中を席巻した新型コロナウイルス感染症である。コロナ禍において人との接触が制限される中、対面によってバイヤーとサプライヤー双方の思いや要望をすり合わせることが肝となる商談会事業は、大きな計画の転換を余儀なくされた。この年も精力的に取り組みを進めるはずであった伊達な商談会は、4月から当面の間開催を見合わせることとなった。2015年から開催してきた東北復興水産加工品展示商談会は、例年通り6月に開催する予定で準備を進めていたが、4月末に中止が決定された。4月に発出された緊急事態宣言は5月25日に全国で解除されたものの、県をまたいだ移動などに慎重な判断が求められる中ではバイヤーたちを招聘することも簡単なことではない。これまでの商流を途切れさせないためにはどうすればよいか、2013年から7年間、試行錯誤を繰り返しながら成長し成熟期にさしかかっていた販路回復・開拓事業は、コロナ禍で別角度からの新たなアイデアを求められることになったのである。そうした中で事業が動き出したのは6月のこと。対面を避けた形で新たな取引をつくろうと「伊達な商談会・バイヤーとの商品マッチング事業」を行った。バイヤーからの希望商品を事前に調査してサプライヤーに募集をかけ、提出されたFCPシート(※)等の資料を基にマッチングを進めるというものである。バイヤーとサプライヤーが直接顔を合わせないというスキームでは、それまで以上にコーディネーターの経験と知識が発揮された。続いて対面による通常型の商談会を再開したのは8月。商談ブースにアクリル板を設置し、参加者は検温やマスクの着用、手指消毒を徹底。試食はせずに、商談が終わるたびに各ブースを消毒するという、感染症対策を徹底した形で行った。9月には集団型商談会を再開するとともに、東北復興水産加工品展示商談会の中止に伴う代替事業としてWEB商談会も実施した。WEB商談では事前に商品サンプルをバイヤー側に送るなどして、可能な限り対面型の商談と近い雰囲気で進められるよう努めた。これらの取り組みは、リモートなどの慣れないやり方で意思疎通が難しい場面も多く、思うように結果に結びつかないこともあったが、少しずつ成果を出していった。コロナ禍においては、こうしてさまざまな手法を試みながら、バイヤーとサプライヤーの橋渡しをサポートしてきたのである。※FCPシート…FCPは農林水産省によるフード・コミュニケーション・プロジェクトのこと。食に携わる関係者が協力して消費者の食に対する信頼向上に取り組むもので、FCPシートは、サプライヤーの伝えたい情報とバイヤーの知りたい情報を1枚にまとめて効率的かつ効果的に商談を進めるための商談用統一シート。時流にあわせた対応の変化3コロナ禍においてはマスク着用、仕切り設置などの感染症対策を講じて商談を行った。仙台商工会議所 東日本大震災 10年の軌跡48

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