東日本大震災10年の軌跡
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て、機械商社のOBを中心に構成した震災対応相談員(機械の目利き)の存在だ。相談員は、全国から寄せられる提供可能機械の情報と、被災事業者が要望する機械の情報から、最適なマッチングを実現させるのに大きな役割を果たした。プロジェクト発足当初は、一刻も早く被災企業に機械を届けたいという思いから、同じボール盤でも現場に持って行ってみるとスペックが合わなかったなどのミスマッチもあった。しかし相談員たちは、持ち前の知識と経験を駆使しながら、事前に提出された要望書類だけでなく、実際に事業所を巡回しながら具体的な要望を聞き取り、時には「こんな機械が提供されているけれども使いませんか」という提案も交えながら、マッチングを進めていった。工作機械を扱うのには専門的なスキルと知識を要する。相談員の目が無ければ、本プロジェクトがこれほど有効に機能することはなかった。相談員の雇用には、仙台市の「緊急雇用創出事業」を活用した。市予算であるので、本来、相談員は市内事業所の支援に注力することが求められるはずであった。しかしこの時は、仙台市の理解が得られ、当所と仙台市との間で被災企業の事業再開支援を推進する連携・協力協定を締結し、相談員の東北6県全域での活動が可能となった。もう一つのポイントは、提供側企業の重い税負担を軽減した点である。通常、寄付金課税では、企業が譲渡した機械の市場価格のうち一定額を超える分は損金に算入できず、課税対象となる。しかし震災後は、復興需要を先取りした中古機械の高騰もあって、提供側企業に税負担が生じる事態となっていた。そこで、日本商工会議所を通じて国へ働きかけ、提供機械の帳簿価格を広告宣伝費として損金算入できる特例的な税制措置を求めたのだ。これにより、さらに支援の輪を拡大することができた。このように、本プロジェクトを進めるにあたっては、行政との強力な連携があったことも忘れてはならない。多くのマッチングを成功させ、復興事業は次のステップへ本プロジェクトでは、最終的に全国124商工会議所654社から5,731件もの提供可能機械の登録があり、3,266件のマッチングが成立した。こうした功績により、2012年3月には、仙台商工会議所として、「被災中小企業の復旧復興支援に係る貢献者」としての経済産業大臣賞も受賞している。本プロジェクトは、被災企業のニーズの変化などにより一定の役割を果たしたとして2015年12月をもって全ての機械の提供・輸送を休止した。その後、商工会議所としての被災地支援は、震災により失った販路の回復・開拓という新しい局面へと移っていくことになる。記憶と経験を次代に継ぐ第2章遊休機械無償マッチング支援プロジェクト震災対応相談員は被災事業者を直接訪問しニーズ把握に努めた。プロジェクトリーダー(統括)横山 英子2011年8月~2016年3月震災対応相談員(機械の目利き)竹沢 和彦2011年8月~2016年3月菅原 幸五2011年8月~2014年3月鈴木 克二2011年8月~2014年3月根元 洋二2014年4月~2015年3月震災対応相談員(マッチングサポートスタッフ)佐藤 章子2011年8月~2015年3月根津千恵子2014年8月~2015年3月■震災対応相談員37

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