東日本大震災10年の軌跡
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第1部■要望日2016年7月5日■要望者東北六県商工会議所連合会■要望先在大韓民国日本国大使館2011年3月の東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う放射性物質の影響により、中国や韓国等、諸外国では農林水産物等の輸入規制が行われております。特に韓国は、事故後、青森、岩手、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、千葉の8県における一部の水産物の輸入を禁止し、2013年9月には、汚染水漏れを理由に、禁止対象を8県の全水産物とする規制強化が図られました。東北では、放射性物質基準を遵守し、基準を超える農林水産物が市場に流通することがないよう万全の対策を講じ、風評対策に取り組んでおりますが、明確な科学的根拠もないままに行われた韓国の措置が継続されていることは、極めて遺憾であります。被災地では、水産庁や各県などの支援により沿岸被災地商工会議所が連携し、復興に向けた積極的な水産物・水産加工品の輸出促進に取り組んでおりますが、このような状態が続けば、東北の基幹産業である農林水産業の復興の足かせになるものと大変危惧しております。実際、韓国の消費に依存していた水産物が、震災前の生産水準まで回復したものの、規制が撤廃されないことから、販売先を確保できず、やむを得ず大量処分するケースも発生しております。日本政府においては、WTOに提訴いただいているものの、被災地では一刻も早い規制撤廃を望んで2.韓国政府における水産物輸入全面禁止措置の早期規制撤廃に関する要望日本政府は、9月3日に東京電力福島第一原子力発電所における汚染水問題に関する基本方針を決定し、国が前面に出て抜本的な対策を講じることになった。しかしながら、韓国政府においては、9月6日に青森、岩手、宮城、福島を含む8県からの全ての水産物の輸入を同月9日から全面禁止することを発表した。我が国における国内外への水産物流通にあたっては、世界的にも厳しい基準値(100Bg/kg)を設定し、モニタリング検査を行い、基準をクリアしたもののみ出荷している。また、石巻魚市場では9月から東北大学生活環境早期復旧技術研究センターと共同開発した新しい検査装置を使用し、放射性セシウム濃度を連続的に高速測定できるようにするなど、風評被害拡大防止に努力をしている。宮城からはホヤ、ホタテ、イワシ、サバ、スケソウダラなどが韓国に輸出されていたが、東日本大震災による被災から立ち直り、まさにこれからという大切な時期の韓国における水産物への規制強化は、販路のみならず、他国への影響等も懸念され、被災地の水産業の復旧・復興の足かせとなり、地域経済を悪化させる大きな要因になるものと考えられる。また、セシウムが微量でも検出された場合に追加されたストロンチウムの検査には、数週間を要することから、事実上水産物の韓国への輸出はできないこととなり、北海道をはじめとした、広範囲にわたった被害の拡大が予想される。ついては、韓国政府における、一刻も早い輸入規制強化措置の撤回により、我が国における水産物の安全性にかかる信頼の回復と、両国間における水産物の流通回復・拡大が図られるよう、特段のご支援をお願いしたい。仙台商工会議所 東日本大震災 10年の軌跡112

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