東日本大震災10年の軌跡
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記憶と経験を次代に継ぐ第10章商工会議所による復興に向けた要望・提言③地方自治体の地方税減免措置による減収分にかかる国の補填措置の拡充④被災事業者の社会保険料(厚生年金、医療、介護、子ども手当拠出金)・労働保険料の免除(雇用・賃金を維持する事業者への免除措置の適用拡大)⑤被災県を復興特区に指定し、中小企業の法人税や所得税を減免するなど被災地復興を支援するための税制の導入(5)被災地域における雇用機会の早期拡充 被災地域の雇用機会を早期に拡大するため、市町村の機能低下等で雇用創出基金事業の執行が遅れている地域では、国や県の主導により執行を加速させる必要がある。また、「被災者雇用開発助成金」は、一度解雇した従業員の再雇用については適用対象外となっているが、沿岸部など被害が甚大な地域では、大半の事業所が従業員を解雇せざるを得なかった実態に鑑み、こうした地域では一般財源の投入により再雇用も適用対象とすべきである。7.エネルギー問題への早急な対応 今夏の電力不足については、国民、企業とも節電に協力し、乗り切ることができたが、労働強化や燃料費、人件費などのコスト増、生産への支障など弊害も大きかった。国は、安全性が確認された原発の再稼働により、当面の電力安定供給を早期に確保する必要がある。また、当面の電力安定供給を確保した上で、中長期のエネルギー政策を示す必要がある。そのためには、新たなエネルギーのベストミックスについて、安全性、安定供給、コスト、品質、環境制約等の総合的な観点から、再生可能エネルギーのみならず、火力、原子力を含めて総合的に検討すべきである。 また、再生可能エネルギーの導入促進、火力の高効率化、原子力の安全性向上等のための技術開発を促進する必要がある。 中小・小規模企業でも省電力対策の機運が盛り上がりつつある。もとより、中小企業は大企業に比べてエネルギー効率が悪く、経営改善のためにも省エネ化を推進する必要がある。このため、省エネ・節電設備導入に対する支援を維持拡充すべきである。 さらには、新型の太陽光発電システムや藻バイオエネルギーなど、被災地域発のシーズや新技術の開発などを生かした新産業の創出・育成に寄与する事業の導入、支援を求める。8.原発事故の早期収束ならびに迅速、確実な損害賠償の実施  原発事故の早期収束と最終的な安全宣言に向けて、国は引き続き全力を傾ける必要がある。また、迅速、確実な被害者への損害賠償が実施されるよう、東京電力だけではなく、政府や自治体でも対応を強化すべきである。9.風評被害対策の拡充 原発事故に端を発する風評被害等の影響により、被災地への観光客の入込みは震災前の水準を取り戻していない。国は被災地が安全であることを国内外に強力に発信するとともに、被災地でのMICE(会議・学会・見本市等)、防災学習等の実施を積極的に奨励するよう求める。 さらには被災地の復興を後押しする意味からも、首都圏等における物産販売等の支援拡充を図られたい。10.三陸沿岸地域への震災メモリアルパークの設置 壊滅的な被害を受けた三陸沿岸地域における災害の記録と伝承を目的に、修学旅行、自治体の研修、世界からの関係者等が訪れ、沿岸被災地の復興の過程をつぶさに見てもらうための国際的な震災・津波メモリアルモニュメントや、国際的な国立防災センターを三陸沿岸地域に設置いただきたい。101

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