東日本大震災の記録と復興の一年の軌跡
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6.被災地域における早期の産業復興 中小企業の事業再開が大幅に遅れている中、被災事業者が「地元での事業再開」の可否を決定するタイムリミットは過ぎつつあり、二重債務問題の解決をはじめ、再起の意欲のある事業者が早急に事業を再開できる環境整備を早急に行うべきである。(1)二重債務問題への迅速かつ大胆な対応 現在、進められている「債権買取りスキーム」については、迅速な対応を図るとともに、リース債権を含め、以下の対応が必要である。なお、債権買取のための機関が併存する場合、事業者が混乱することなく、円滑かつ迅速な支援を受けられるよう、適切な運用を図られたい。①買取りの状況に応じた十分な債権買取り規模の確保②生業を営む個人・小規模事業者をはじめ、数多くの事業者からの相談に対し、迅速かつきめ細かい対応を図るような体制の整備③金融機関による被災事業者再生の取組みを円滑に進めるため、金融機能強化法を最大限活用した金融機関の経営基盤の強化および返済を要しない資金の金融機関への投入といった特例措置、およびリース事業者の損失負担軽減にかかる検討(2)資金繰り対策の円滑な実施等 事業者が必要な資金調達を迅速に行うことができるよう、東日本大震災復興特別貸付、東日本大震災復興緊急保証等を含め、各種資金繰り支援策の円滑な制度運用を図られたい。また、東日本大震災復興特別貸付、マル経融資震災対応特枠については、金利低減措置の対象者を拡大するとともに、既往借入に加えて新規借入をする場合の借換え一本化制度の導入、全壊等の被災事業者に対する支援措置の拡充が必要である。(3)事業再開に必要な事業用設備に対するさらなる支援 震災により事業用設備を滅失・毀損した事業者の事業再開を促進するため、仮設店舗・工場等の早期建設や、中小企業等のグループが行う施設の整備、被災事業者への遊休機械の無償譲渡にかかわるマッチング等への支援を早期かつ着実に実施すべきである。(4)税制面の支援 被災事業者の事業再開や事業承継とその後の経営の安定化、さらなる投資促進や事業活動に向けたキャッシュフローの充実を図るため、以下に掲げる税制措置等を講じる必要がある。①非上場株式等にかかる相続税および贈与税の納税猶予制度の適用要件の緩和(雇用継続要件、資産管理会社該当要件等)②間接被害や風評被害を受け、急激な経営環境の悪化に直面している事業者に対する固定資産税等の減免③地方自治体の地方税減免措置による減収分にかかる国の補填措置の拡充④被災事業者の社会保険料(厚生年金、医療、介護、子ども手当拠出金)・労働保険料の免除(雇用・賃金を維持する事業者への免除措置の適用拡大)⑤被災県を復興特区に指定し、中小企業の法人税や所得税を減免するなど被災地復興を支援するための税制の導入(5)被災地域における雇用機会の早期拡充 被災地域の雇用機会を早期に拡大するため、市町村の機能低下等で雇用創出基金事業の執行が遅れている地域では、国や県の主導により執行を加速させる必要がある。また、「被災者雇用開発助成金」は、一度解雇した従業員の再雇用については適用対象外となっているが、沿岸部など被害が甚大な地域では、大半の事業所が従業員を解雇せざるを得なかった実態に鑑み、こうした地域では一般財源の投入により再雇用も適用対象とすべきである。7.エネルギー問題への早急な対応 今夏の電力不足については、国民、企業とも節電に協力し、乗り切ることができたが、労働強化や燃料費、人件費などのコスト増、生産への支障など弊害も大きかった。国は、安全性が確認された原発の再稼働により、当面の電力安定供給を早期に確保する必要がある。また、当面の電力安定供給を確保した上で、中長期のエネルギー政策を示す必要がある。そのためには、新たなエネルギーのベストミックスについて、安全性、安定供給、コスト、品質、環境制約等の総合的な観点から、再生可能エネルギーのみならず、火力、原子力を含めて総合的に検討すべきである。 また、再生可能エネルギーの導入促進、火力の高効率化、原子力の安全性向上等のための技術開発を促進する必要がある。中小・小規模企業でも省電力対策の機運が盛り上がりつつある。もとより、中小企業は大企業に比べてエネルギー効率が悪く、経営改善のためにも省エネ化を推進する必要がある。このため、省エネ・節電設備導入に対する支援を維持拡充すべきである。 さらには、新型の太陽光発電システムや藻バイオエネルギーなど、被災地域発のシーズや新技術の開発などを生かした新産業の創出・育成に寄与する事業の導入、支援を求める。63

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